- 「子ども・子育て支援金制度」とは何か?
子ども・子育て支援金制度とは、深刻化する少子化トレンドを反転させることを目指し、社会全体で子育て世帯を支えるために創設される**「新しい分かち合い・連帯の仕組み」**です。年齢や子どもの有無にかかわらず、すべての世代、すべての経済主体(個人や企業)が連帯し、子どもたちや子育て世帯を支える社会構造を構築することを基本理念としています。
社会連帯の理念を基盤に、こどもや子育て世帯を、全世代・全経済主体が支える新しい分かち合い・連帯の仕組みです。
この制度は、より大きな政策の一部として位置づけられています。次に、その背景にある政府の戦略を見ていきましょう。
- なぜ今?制度の背景にある「こども未来戦略<加速化プラン>」
この支援金制度は、政府が推進する**「こども未来戦略<加速化プラン>」**を実現するための重要な財源として創設されます。このプランは、総額3.6兆円規模の予算を投じて少子化対策を抜本的に強化することを目的とした国家戦略です。
加速化プランは、主に以下の3つの柱で構成されています。
- ライフステージを通じた経済的支援の強化: 妊娠・出産から高等教育に至るまで、子どものライフステージに応じた経済的支援を切れ目なく強化します。
- 全てのこども・子育て世帯への支援の拡充: 親の就労状況を問わず、全てのこども・子育て世帯が必要とする多様な支援やサービスを拡充します。
- 共働き・共育ての推進: 男女が共に育児に参加しやすいよう、育児休業制度の拡充や時短勤務中の所得を支える新しい給付を創設します。
これらの意欲的な目標を達成するためには、安定した財源が不可欠です。そこで、支援金制度がどのように財源を確保し、負担を分かち合うのかを次に解説します。
- どうやって実現する?「財源」と「負担」の仕組み
この制度は、国民に新たな負担を強いるのではなく、社会全体の改革の中で財源を生み出すことを基本方針としています。
3.1. 財源の3つの柱と「実質負担ゼロ」の考え方
加速化プランの財源は、以下の3つの要素を組み合わせて確保されます。
- 既定予算の最大限の活用: 既存の国家予算を見直し、子ども・子育て関連に最大限振り向けます。
- 歳出改革の徹底: 社会保障分野を含む徹底した歳出改革を行い、公費を節減します。
- 子ども・子育て支援金制度の創設: 上記の取り組みだけでは不足する分を補う、少子化対策に特化した安定財源として新設されます。
政府は、この仕組みによって**「実質的な負担が生じないこと」**を目指すとしています。これは、歳出改革による社会保険負担の軽減効果や、経済成長に伴う賃上げの効果の範囲内で支援金制度を構築するためです。つまり、国民一人ひとりの手取り収入が、この制度の導入によって減らないように設計するという考え方です。
3.2. 誰が、どのように負担するのか?
支援金は、すべての世代・経済主体から、**令和8年度(2026年度)**より医療保険料に上乗せする形で徴収されます。
具体的な徴収額の決定は、以下の流れで行われます。
- 全体の支援金額: まず、その年度に必要な支援金の総額が国によって決定されます。
- 世代間の按分: 総額を、後期高齢者と現役世代それぞれの医療保険料負担の総額に応じて按分します。
- 保険制度間の按分: 次に、現役世代の負担分を、国民健康保険と被用者保険(企業の健康保険など)の加入者数に応じて按分します。
- 被用者保険内の按分: 最後に、被用者保険の負担分を、各保険者(協会けんぽ、健保組合など)の総報酬額(給与や賞与の合計)に応じて按分します。
3.3. 具体的な負担額の目安
徴収は段階的に始まり、加入者1人当たりの平均月額は以下のように見込まれています。
- 令和8年度: 約250円
- 令和9年度: 約350円
- 令和10年度: 約450円
制度が本格導入される令和10年度時点での、加入する医療保険制度別の月額負担額の目安は以下の通りです。
| 加入医療保険制度 | 加入者1人当たり月額(令和10年度見込み) |
| 全制度平均 | 450円 |
| 被用者保険(協会けんぽ) | 500円 |
| 被用者保険(健保組合) | 600円 |
| 国民健康保険(市町村国保) | 400円 |
| 後期高齢者医療制度 | 350円 |
これらはあくまで平均額であり、実際の負担額は所得によって異なります。
ちなみに被用者保険に加入されている方の支援金額は、標準報酬月額×支援金率となります。令和8年度の支援金率は、0.23となっています。また、基本的には支援金額の半分は企業負担となっており、令和8年4月保険料(5月に給与天引き)より拠出されることになります。
参考として、こども家庭庁が公表した資料では、令和10年度時点での所得に応じた拠出額の機械的な計算例が示されています。例えば、被用者保険に加入する会社員の場合、月額負担額の目安は以下のようになります。
- 年収400万円の場合:月額650円
- 年収600万円の場合:月額1,000円
- 年収800万円の場合:月額1,350円
なお、資料には国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者についても、それぞれの所得(国保は世帯収入、後期高齢者は年金収入など)に応じた計算例が記載されています。低所得者に対する軽減措置が設けられているほか、国民健康保険においては18歳以下の子どもの均等割額が全額免除されるなど、子育て世帯への配慮もなされています。
では、このようにして集められた支援金は、具体的にどのような支援に使われるのでしょうか。
- 何に使われるの?支援金が支える7つの主な給付
支援金は、法律によって使途が厳格に定められており、子ども・子育て支援に関する特定の給付・事業にのみ充てられます。医療保険料と一緒に徴収されますが、医療費に使われることはなく、完全に独立した財源として管理されます。
すでに始まっているものもありますが、支援金によって支えられている主な給付・事業は以下の通りです。
| 給付・事業名 | 主な内容 | 開始時期 |
| 児童手当の抜本的拡充 | 所得制限の撤廃、支給対象を高校生年代まで延長、第3子以降は月額3万円に増額。 | 令和6年10月分~ |
| 妊婦のための支援給付 | 妊娠・出産時に合計10万円相当の経済的支援を制度化。 | 令和7年4月~ |
| 出生後休業支援給付 | 男女で育休を取得する場合、手取り10割相当を目指す新たな給付を創設。 | 令和7年4月~ |
| 育児時短就業給付 | 2歳未満の子を養育するための時短勤務中、賃金の10%を支給する新たな給付を創設。 | 令和7年4月~ |
| こども誰でも通園制度 | 親の就労要件を問わず、子どもを時間単位で預けられる制度を給付化。 | 令和8年4月~ |
| 国民年金保険料免除措置 | 国民年金第1号被保険者の育児期間中の保険料を免除。 | 令和8年10月~ |
| 子ども・子育て支援特例公債の償還 | 制度開始までのつなぎ財源として発行される特例公債の償還費用。 | – |
この制度が創設されることで、子ども一人当たりが高校卒業までに受けられる給付の改善額は、平均で約146万円に上ると試算されています。
それでは、これらの施策がいつから実行されるのか、具体的なスケジュールを見てみましょう。
- いつから始まる?制度の導入スケジュール
支援金制度の導入と関連する給付の拡充は、以下のスケジュールで段階的に進められます。
- 令和6年度 (2024年度): 児童手当の拡充が開始。
- 令和7年度 (2025年度): 育休・時短勤務時の新給付などが制度化。
- 令和8年度 (2026年度): 子ども・子育て支援金の徴収が開始(月額平均約250円)。こども誰でも通園制度が給付事業として開始。
- 令和9年度 (2027年度): 支援金の徴収額が増加(月額平均約350円)。
- 令和10年度 (2028年度): 支援金制度が本格導入され、拠出額が目標の1兆円規模に到達(月額平均約450円)。
最後に、この制度の核心となる理念と、よくある疑問について再確認しましょう。
- まとめ:制度の理念と重要ポイントの再確認
このセクションでは、よくある質問に答える形で、制度の重要なポイントを整理します。
Q1: なぜ、子育て世帯だけでなく「全世代」で支える必要があるのですか?
少子化対策を強力に推進し、日本の経済・社会システムを維持することは、高齢者や子どものいない世帯を含むすべての人々の利益につながるからです。将来の社会保障制度の担い手を育てることは、国民皆保険制度をはじめとする社会保障全体の持続可能性を高め、結果的に全世代の安心に貢献します。
Q2: 若い世代や子育て世帯にとって、結局は負担増ではないのですか?
拠出(負担)はありますが、子育て世帯が直接受け取る給付(リターン)はそれを大幅に上回ります。試算では、子ども一人当たりの累積給付改善額は約146万円に達します。これは、若い世代や子育て世帯を経済的に確実に支援するための仕組みです。
Q3: 医療保険料と一緒に徴収されますが、医療費に使われることはないのですか?
その心配はありません。支援金は法律によって医療保険とは明確に区分された別の制度です。集められた資金は、定められた子ども・子育て支援給付にのみ使途が限定されています。また、高齢化に伴い上昇する傾向にある医療保険料とは異なり、この支援金の率が同じように自動的に上がり続けることは想定されていません。
参考資料:子ども家庭庁ホームページ 「子ども・子育て支援金制度について」
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkinseido#1