令和8年8月から高額療養費制度が見直されることになりました。今回の改正は、少子高齢化に伴う医療費全体の増大に対応し、「持続可能な社会補償制度の維持」と「長期療養が必要な患者への重点的な保護」の両立を目指して実施されます。
では、具体的にはどのように変わるのか、そもそも高額療養費とはどのような制度か、あらためて整理したいと思います。
<1.高額療養費とは?>
高額療養費制度は、ひと月に医療機関等に支払った医療費が高額になった場合に、所得に応じて定められた自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。
会社の健康保険であれば標準報酬に応じて、国民健康保険であれば所得に応じて、5つの区分にわけられ、各区分に応じて上限額が決まります。
<2.どのように変わったのか?>
①月の上限額の引き上げ
月の上限額については、各区分とも引き上げとなりましたので、負担が増えます。

例:標準報酬30万円の人が、100万円の医療費のかかる治療をした場合、自己負担額は次のようになります。
<改正前>
80,100円+(100万円-267,000円)×1% → 80,100円+7,330円=87,430円
<改正後>
85,800円+(100万円-286,000円)×1% → 85,800円+7,140円=92,940円
②多数回該当は変更なし
高額療養費には「多数回該当」という仕組みがあり、直近12か月の間に3回以上、高額療養費の支給を受けていると、4回目以降はさらに自己負担額が引き下げられます。
これについては、今回の改正で変更はありませんでした。
例:標準報酬30万円の人が、100万円の医療費のかかる治療を4か月した場合、自己負担額は次のようになります。
◯ 1~3か月目・・・92,940円(月の上限)
◯ 4か月目以降・・・44,400円(多数回該当の上限)
③年間の上限額の新設 NEW!
新たに「年間上限額」という仕組みが設けられました。
ここでいう年間とは「毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間」を指します。
この間に、各区分における年間の上限額に達した場合、それ以上の負担はありません。

例:標準報酬30万円の人が、100万円の医療費のかかる治療を12か月(8月~翌7月)した場合、自己負担額は次のようになります。
◯ 1~3か月目・・・92,940円(月の上限)
◯ 4~8か月目・・・44,400円(多数回該当の上限)
◯ 9か月目・・・29,180円(ここまでで累積53万円に達する)
◯ 10~12か月目・・・0円(負担なし)
この年間上限額の導入により、長期にわたり高額療養費を利用している方や、多数回該当に該当しない程度の治療費が継続してかかっている方、極めて高額な医療を受けた方などは、医療費の負担が軽減されることが期待されています。
例:標準報酬30万円の人が、5千万円の医療費のかかる治療をした場合
85,800円+(5千万円-286,000円)×1% → 85,800円+497,140円=582,940円
年間上限を超えるため、負担は53万円までとなります。
ただし、年間上限額の適用については、その仕組み上、7月末にならないと年間の医療費が確定しないため、毎月の医療費については、一旦窓口で負担をし、後から申請して戻してもらう「償還払い」になるとのことです。
<3.高額療養費はどうやって使う?>
以前は償還払いが主でしたが、現在は、窓口での負担が限度額までとなる現物給付方式が主になっています。窓口での負担を限度額までとするには、
- マイナ保険証で受診している方 → 手続きなしで自動的に適用になります。
(マイナポータルで自分がどの区分なのかも確認することができます。)
- 資格確認書で受診している方 → ご加入の健保に「限度額認定証」を交付してもらって病院に提示するか、医療機関によっては「オンラインでの資格情報確認」に同意をすれば適用になるところもあるようですので、この辺りは医療機関にご確認ください。
<4.高額療養費の対象となる“医療費”とは?>
◯ → 診察料、検査代、手術代、薬代、入院基本料など
✕ → 食事代、差額ベッド代、診断書などの文書料、先進医療の技術料など
高額療養費の対象にならなくても、所得税の医療費控除としては認められる場合があります。食事代、先進医療の技術料、インプラントなど医師が治療のため必要と認めたものは、医療費控除の対象になる可能性がありますので、判断に迷うものについては、お近くの税務署にご確認ください。
今回の改正は第一段であり、来年令和9年8月にも改正が予定されています。
現在、5段階となっている区分を細分化し13段階とすることや、低所得層への優遇などが盛り込まれる予定です。