カスハラ・就活ハラスメント義務化へ|経営者が知るべき最新ガイドライン解説

令和8年(2026年)10月のカスタマーハラスメント、就活ハラスメントに対する企業の対応義務化に向け、厚生労働省より4月にハラスメント防止措置に関する新たな解釈事項が示されました。労働環境を守り、企業価値を維持するためには、従来の「ハラスメント対策」の常識をアップデートしていく必要があります。

本コラムでは、企業が特に見直すべき「カスタマーハラスメント」「パワーハラスメント」「求職者等へのハラスメント」の3つの最新ポイントを分かりやすく解説します。

  1. 「お客様」以外も対象に?進化するカスタマーハラスメント(カスハラ)対策

「カスハラ=クレーマーのお客様」という認識は、もはや古くなりつつあります。今回の指針では、まだ商品を購入していない「潜在的な顧客」や、施設の「近隣住民」からの理不尽な言動もカスハラの対象になると明言されました。さらに、自社の店舗内だけでなく、営業先や訪問介護先など「業務で訪問した先」で取引先やサービスの利用者から受ける言動も対象となります。

では、どこからがハラスメントとなるのでしょうか。その判断基準は「社会通念上許容される範囲」を超えているかどうかにあります。たとえば「無断での撮影」も、労働者がやめるように伝えたにもかかわらず執拗に撮影し続けるようなケースは、精神的な攻撃としてカスハラに該当し得ます。

企業は労働者を守るため、毅然とした態度で対応する方針を全ての労働者に周知しなければなりません。証拠として顧客とのやり取りを録音・録画する場合は、個人情報保護法に基づき、あらかじめホームページ等で利用目的(事実関係の確認に使用すること等)を公表しておく必要があります。また、従業員が1名の店舗などでは、一定時間経過後の退店要求や電話の切断、警察への通報といった具体的な対処手順を定めておくことが求められます。

  1. 部下から上司へも?多様化するパワーハラスメント(パワハラ)

パワハラといえば「上司から部下へ」というイメージが先行しますが、同僚や部下からの言動であってもパワハラに該当するケースがあります。当該業務に必要な知識や経験を持っている部下の協力を得なければ業務が成り立たないなど、「優越的な関係」を背景としていると判断されるためです。

また、注意すべきは終業後の「懇親の場」です。勤務時間外であっても、職務との関連性や参加の強制性などを踏まえ、実質的に職務の延長と考えられる場合は「職場」とみなされ、パワハラの対象として扱われます。

さらに、近年のダイバーシティ推進において重要なのが、労働者の性的指向やジェンダーアイデンティティに関する「カミングアウトの強要・禁止」です。本人の了解を得ずに周囲へ暴露すること(アウティング)も典型的なパワハラに該当するため、管理職を含め社内全体の意識改革が必須です。

  1. 未来の社員を守る!求職者等へのセクシュアルハラスメント対策

採用活動に関わるハラスメント(就活ハラスメント)への対策も強化されています。保護の対象となる「求職者等」には、採用面接の参加者だけでなく、インターンシップ生やOB・OG訪問を行う学生、教育実習生なども広く含まれます。カフェなどの飲食店で行われるOB・OG訪問であっても、実質的に事業主の採用に資する活動であれば「求職活動等」とみなされます。

未来の社員を守るため、企業は面談時のルール作りを急ぐ必要があります。具体的には、「面談時間・場所の指定」「複数人で対応する体制」「連絡に用いるSNSの種類の指定」といった規則を定め、学生や担当者に周知することが推奨されています。

万が一トラブルが起きた際に備え、相談窓口の設置も重要です。求職者が採用担当者(人事)には不都合を恐れて相談しづらい心理に配慮し、人事担当者以外の者を窓口に指定することも有効です。また、学生が大学のキャリアセンターなどに駆け込んだ場合は、教育機関からの情報提供と連携して適切に対応することが企業には求められます。

なお、これらのセクシュアルハラスメントは、異性間だけでなく同性に対する性的な言動も該当します。さらに、自社の従業員が取引先の社員から性的な言動を受けた場合もセクハラとなるため、社内外を問わず守る体制が必要です。

まとめ:企業に求められる「正しい知識」と「守る体制」

ハラスメント問題は、もはや当事者間だけの問題ではありません。各種ハラスメントが複合的に発生するケースも考慮し、企業は「相談窓口」や「対応する担当者」をあらかじめ明確にし、マニュアル整備や担当者研修を行うなど、実質的に機能する体制を整える必要があります。

新たな解釈事項をきっかけに、自社の就業規則やハラスメント防止に関するマニュアル、相談体制を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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