会社と従業員との間でトラブルになりがちな時間外労働の賃金(時間外手当)と残業手当について、どれだけご存じですか?
今回は、時間外手当と残業手当についてのお話です。従業員との間でトラブルにならないように、確認しておきましょう。
法定の労働時間、休憩、休日について
使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
出典:労働時間・休日 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
支払われ るべき時間外手当および残業手当について
前提条件として、 従業員に残業を行わせるには、「36協定」の締結・届け出と割増賃金の支払いが必要になります。
なお、36協定は、1人でも従業員がいれば届け出をする必要があります。
索引:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501860.pdf
では、具体的に支払われるべき時間外手当や残業手当はどのようなものなのでしょうか。
1日の労働時間が7時間で10時間労働した場合は、プラス1時間が法廷内残業で残業手当を支払う必要があり、2時間が法定外残業となり2時間分の割増賃金(時間外手当)を支払う必要があります。
※ 法廷内残業とは、「企業の定める所定労働時間は超えているが、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間以内の労働)を超えていないもの」とされ、法定外残業とは、それらを超過している労働のことです。
ここで勘違いしてはいけないことは、
1日8時間と1週間40時間どちらか一方が該当した時に、時間外手当もしくは残業手当がつく、ということです。
例えば、1日8時間労働で週5日間なら、週40時間の労働なので、時間外手当や残業手当はつきません。
では、1日8時間で週6日間ならどうでしょうか。
1日8時間だから時間外手当はつかないと思いきや、週48時間ですので、8時間分の時間外手当がつきます。
さらに、
1日8時間労働で週5日働いている人が、
月曜日は2時間時間外労働をし、
火曜日に2時間遅刻した。
とします。
これは、相殺されるのかと思いきや、相殺されません。
月曜日の2時間分は、割増賃金(時間外手当)を支払う必要があります。
「遅刻分を昨夜の残業分と相殺ね。」というわけにはいかないので注意しましょう。
もう一つ、イレギュラーなケースを考えてみましょう。
9時から18時勤務で途中1時間の休憩を入れ、8時間勤務の従業員に、どうしても1時間早めに来てほしいと従業員にお願いしたとします。
仕事を終える時間は、18:00です。
この場合はどうなると思いますか?
正解は、「1時間の時間外手当を支払う」です。
「え、なぜ?」と思われたかと思いますが、
実は、1日の労働時間は、実際の出勤時間から計算するからです。
このケースの場合は、17:00以降が時間外労働になる、ということです。
休日出勤をお願いする場合の休日手当は絶対必要?
「仕事の状況でどうしても従業員に、次の休日は出勤してほしい」
けど、休日手当を出すことが少々厳しい。
そんな時はどうしたらよいのでしょうか。
その場合は、振替休日を取ることを前提に、出勤してもらいましょう。
この際の注意事項としては、振替休日と代休とを正しく認識する必要があります。
振替休日とは、法定休日をほかの出勤日とあらかじめ交換して労働させ、事前または事後に休日を与えた場合のことを指します。この場合は、休日手当は不要です。
代休とは、勤務日の振り替えを行わず法定休日に労働させ、事後に代休を与えた場合のことを言います。これは、休日手当が必要です。
正しく認識し、従業員に気持ちよく働いてもらいましょう。
時間外手当や残業手当の支払いでトラブルにならないために
時間外手当や残業手当の支払いでトラブルになる場合は、大元を正せば、労働者が考える「労働時間」と会社が考える「労働時間」が違うために起こるといえるでしょう。
では、労働時間とは何でしょうか。
これは厚生労働省が提示しているのですが、
労働時間とは、「使 用者の指揮命令下に置かれている時間」のことです。
さらに、以下のようにも述べられています。
❝1.使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務を行う時間は労働時間に当たります。
2.労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。❞
ここで、気をつけなければいけないのは、「明示的・黙示的な指示」と記載されていることです。
ハッキリと明確に「残業」を指示した場合だけではなく、ハッキリと示されていない間接的な形で暗示された「残業」でも労働時間になるのです。
例えばですが、
態度や職場の雰囲気で残業せざるを得ない環境でも「労働時間」に当たる可能性があります。
もし、残業をしてほしくない場合は、
監督者が労働者(従業員)にハッキリと「定時になったので、帰ってください」と言う必要があります。
まとめ
いかがでしょうか。
従業員の方に気持ちよく働いてもらうために、労働に関する賃金トラブルは避けたいものですよね。「労働に対する賃金」を正しく理解することは、会社と従業員との間の関係を円滑に保つ上で極めて重要です。