経営者向け:フリーランス法で変わる業務委託の新常識

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法、俗にフリーランス法といわれています。)(令和5年度法律第25号。)が令和6年11月1日に施行されました。

今回は、フリーランス法について公正取引委員会の特設サイトから、概要をまとめてご案内いたします。

(引用:公正取引委員会フリーランス法特設サイト)

この法律での「フリーランス」とは、

業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しない者をいいます。

一般的にフリーランスと呼ばれる方には、「従業員を使用している」「消費者を相手に取引をしている」といった方が含まれる場合もありますが、この法律における「フリーランス」には該当しません。

具体的には、事業者が従業員のいない事業主に仕事を委託する場合が対象となり、個人が委託する場合や自身が作ったものを個人に売却するなどは対象となりません。

法律の内容は、次の通りです。

「法律に定められている義務の内容」

発注事業者や業務委託期間で義務の内容が異なります。

対応が必要な義務項目番号の確認チャート

(引用:公正取引委員会フリーランス法特設サイト)

【義務項目】

① 書面などによる取引内容の提示

フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。明示方法は、口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。

取引条件として明示する事項は9つです。

(1) 給付の内容、(2) 報酬の額、(3) 支払期日、

(4) 業務委託事業者・フリーランスの名称、(5) 業務委託をした日、

(6) 給付を受領する日/役務の提供を受ける日、

(7) 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所、

(8)(検査をする場合)検査完了日、

(9)(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

② 報酬支払期日の設定・期日内の支払い

報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。ただし、元委託者から受けた業務を発注事業者がフリーランスに再委託をした場合、条件を満たせば、元委託業務の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることができる【再委託の例外】もあります。

③ 7つの禁止行為

フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、7つの行為が禁止されています。

(1) 受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)

(2) 報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)

(3) 返品(受け取った物品を返品すること)

(4) 買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)

(5) 購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)

(6) 不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)

(7) 不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)

④ 募集情報の的確表示

広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

⑤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。また、6か月未満の業務を委託している場合も配慮するよう努めなければなりません。

配慮の例としては、

●「妊婦健診がある日について、打ち合わせの時間を調整したり、就業時間を短縮したりする」

●「育児や介護などのため、オンラインで業務を行うことができるようにする」

といった対応があげられます。

⑥ ハラスメント対策に関する体制整備

ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応のための体制整備などの必要な措置を講じなければなりません。

体制整備などの必要な措置の例としては、

●「従業員に対してハラスメント防止のための研修を行う」

●「ハラスメントに関する相談の担当者や相談対応制度を設けたり、外部の機関に相談への対応を委託する」

●「ハラスメントが発生した場合には、迅速かつ正確に事実関係を把握する」

などの対応があげられます。

⑦ 中途解除等の事前予告・理由開示

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合で、その業務委託に関する契約を解除する場合や更新しない場合、少なくとも30日前までに、①書面②ファクシミリ③電子メール等による方法でその旨を予告しなければなりません。

また、予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を請求した場合、同様の方法により遅滞なく開示しなければなりません。

上記の様な義務を個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者が負うことになります。

法の取引の適正化に係る規定については主に公正取引委員会及び中小企業庁が、就業環境の整備に係る規定については主に厚生労働省がそれぞれ執行を担うことになります。

違反した場合は、発注事業者は行政の調査を受けることになり、指導・助言や、必要な措置をとることを勧告されたり、勧告に従わない場合には、命令・企業名公表、さらに命令に従わない場合は罰金が科されます。 <出典 公正取引委員会フリーランス法特設サイト https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/>

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